フィンランド、アラビアの製品は
「フォルムデザイン」と「デコレーションデザイン」とで
大きく2つの分野でデザインを区分しています。
フォルムデザインは形状で、
デコレーションデザインは装飾=柄。
数多くのデザイナーが入る中で、
ミッドセンチュリーを代表する装飾デザイナーが
エステリ・トムラです。
エステリ・トムラ(1920-1998)
エステリ・トムラは第二次世界大戦の影響で大学の卒業が遅れますが、
戦後の47年に大学を卒業、アラビアに勤め始めます。
その後1984年まで活動を続けるのですが
およそ40年のデザイン人生の中で150のパターンを
世に発表したと言われています。
40年と一括りにしましたが
フィンランドデザインはその中でも変わりがありました。
食器の文化はもともと「伝統的な」ヨーロッパのデザインを
それぞれの国で模倣することが中心でした。
20世紀初頭、民族意識の高まりとともに
それぞれの国での独自の美意識を追求し始めます。
フィンランドのアラビアでは1916年に
親会社であったロールストランド(スウェーデン)からの独立、
1932年のアラビアアートデパートメント(アート部門)設立。
工場による大量生産を是としたこの時代に、
アラビアでは代表取締役のカール・グスタフ・ヘルリッツにより
芸術性を重んじる社風を根付かせました。
第二次世界大戦では敗戦国となるものの、
アラビアは海外への輸出により外貨を稼ぎ続け成長を続けます。
「フィンランドデザインの良心」とも呼ばれる
カイ・フランクが同社に入社するのもこの時期(1945年)です。
エステリ・トムラはその後1947年にアラビアに入社します。
得意とするのはフィンランドの自然や植物。
嫋やかで、女性らしい目線は多くの支持を得たデザインです。
1950年に入りカイ・フランクはアートディレクターに就任、
北欧デザインは黄金期に突入します。
アウリンコ(1973-74)
カトリーリ(1975-77)
クロッカス(1978-79)
フローラ(1979-81)
・・・
トムラは数多くの作品を発表しますが、
そのデザインは豊かな装飾を中心としています。
デザインの主流はいつしか生産性や機能性が
求められるようになっていくのですが
トムラの豊かな装飾は多くの家庭に受け入れられ
アラビアのミッドセンチュリーを代表するものなりました。
今回入荷したフローラも、そんな作品の中の一つです。
春の野花を描いた作品。
決して華やかなものではありませんが、
小さなものへの愛情を感じる良作です。